阪急芦屋川駅を北へ歩くと、小高い丘のこんもりと茂った木々の間から「ヨドコウ迎賓館」の、一見すると“塔”とも表現できる2つの大きな煙突が見えてきます。後方の煙突が一段高い位置に見えるのは、建物の特徴となるべく傾斜地をそのまま生かして設計されているからです。 近代建築の三大巨匠の一人として著名なフランク・ロイド・ライト。ヨドコウ迎賓館は、彼が設計した住宅建築としては日本で唯一ほぼ完全な姿で現存するものです。
大正13年(1924)、現「ヨドコウ迎賓館」は施主の酒造家・八代目山邑太左衛門氏の別邸として建てられました。戦後になると、㈱淀川製鋼所が社長公邸として所有しますが、その後10年余りは米国人家族に住居として貸し出されます。
さらに独身寮として使用された後、昭和49年(1974)、大正時代以降の建築物で初の国の重要文化財に指定。ライトの貴重な功績を残そうと大掛かりな調査・修理工事が行われ、現在に至ります。
この建物のスケールからするとかなり小さな各部屋の入口は、入室後の広い空間を強調し、開放感を高める仕掛け。2階応接室の横長の大きな窓や1階車寄せの吹き抜けの開口部は、あるがままの風景をまるで絵画のように見せます。さらに、天井近くの壁に並ぶ通風口やたくさんの作り付け収納家具など、贅をつくした邸宅ながら、住む人の視点に立ったきめ細かい配慮があちらこちらに。もちろん、細部にわたり、モダニズムが息づくこだわりのデザインが施されていることは言うまでもありません。
山邑氏が長女の誕生を祝って京都の老舗人形店に作らせた豪華な雛人形が、雛祭りの時期(2月中旬〜4月初旬)に室内に飾られます。期間の後半は、ちょうど庭先と芦屋川沿いの桜が楽しめる季節に。もちろん秋には庭と六甲山麓の美しい紅葉と、周りの自然も大きな魅力の一つです。
建築やデザインを学ぶ多くの学生が、ライトの設計思想を目の当りにしようと訪れますが、さらに四季折々の風情も知りたいと何度も訪れる人も多いそうです。
◎開館日 | 毎土・日・水曜日、祝日 |
◎開館時間 | 10:00 – 16:00(入館は15:30まで) |
◎入館料 |
大人・大学生/500円、小・中・高校生/200円 団体(30名以上)大人・大学生/400円、小・中・高校生/100円 |
◎アクセス | 阪急芦屋川駅より北へ徒歩10分、JR芦屋駅より徒歩15分 |
◎お問い合わせ |
○ヨドコウ迎賓館 芦屋市山手町3-10 TEL.0797-38-1720 http://www.yodoko.co.jp/geihinkan/ ○㈱淀川製鋼所 広報課 TEL.06-6245-9103 |